キルアが「まいった」と言ったのを聞いて、はぐっと
拳を握り締めた。
混合夢16
〜五次試験開始3〜
キルアとギタラクルの試合開始直後、ギタラクルは針を
抜き去り、本来の姿になって其処に立っていた。
軽い口調でキルアに声を掛け、イルミは嬉しそうな雰囲気
をかもし出している。
無表情ではあったけれど。
話はどんどん進んでいく。
シナリオ通りに。
「まいった」
キルアがこの言葉を口に出すまでに、さほど時間は掛からな
かった。
+++++
「お前をちょっとためしてみたのだよ」
視線の先で、イルミがそう告げるを聞きながら、は
考えた。
グルグルと色んな考えが頭に浮かんでは過ぎていく。
「う〜……」
そんな事を考えている間に、キルアが抜け殻の様な表情で
こっちへと帰ってくる。
「キルアっ」
慌てて駆け寄ると、肩に両手を乗せて目線を合わせた。
クラピカとレオリオをすぐに駆け寄ってきて、周りを取り囲んだ。
それでも、キルアの表情が晴れる事は無く。
フラリとしたまま、口も開かなかった。
「キルア……」
去っていく後姿を見つめて、溜め息を溢す。
もうすぐ帰ってしまう自分に何が出来るのか。
はククルーマウンテンに行くことは出来ない。
でも……今何か出来ることは無いのだろうか?
俯き考える。
結果、行き当たった考えは至極単純な事だった。
「私……止めたい」
誰にも聞こえないような声で呟いた。
リドルだけがそっと振り返る。
何で忘れてたんだろうか……。
キルアが失格になる。それだけじゃないって事を。
此処で……目の前で人が亡くなるのだ。
今までの試験だって、人はあっけなく死んでしまっていた。
リドルのおかげか、無事に何も見ることなく此処まで来た
だけなのだ。
でも……この後の事は確実に起こると知っているし、此処まで残っ
ていれば全員と、少なからず面識がある。
しかもキルアが攻撃するのだ。
ほってはおけない。
いくらキルアが暗殺者だと知っていても、此処で望まない
相手を殺すのを見るのは嫌だった。
何より、ポドロさんを見殺しにできない。
「?」
リドルが怪訝そうにを覗き込んでくる。
「決めた!ボドロさんは絶対助ける」
みんなには聞こえないように、そっとリドルに耳打ちする
と、はポケットの中の杖を握り締めた。
+++++
とうとう始まった。
レオリオとボドロ戦。
は素早く杖を振って、呪文を口にした。
周りは気がついていない。
倒れるボドロ。
呪文はちゃんと掛かった。
は杖を仕舞って息を吐いた。
