気弱な彼女08








あれから、少年は拾って助けた?のだからと
の所有を主張し続けて、取り合えず認めれば命の安全
を保障すると言うので、は速攻で肯いていた。






「これからはここで暮らすと良いね」



何だか拍子抜けした気分だ。

の予想では、もっと凄い事を要求されるかも
知れないとびくびくしていたのだ。


「ワタシはフェイタンね。お前の名前は何て言うか?」



。これからよろしく」





握手のつもりで出した手だが、フェイタンは不思議
そうに首を傾げた。



「何ね?」




ふざけている分けでも、嫌がらせでも無く、本当に
分からないようで、ジーットの手を見つめて
いる。


は険しくなっていくフェイタンの顔に慌てて
手を引っ込めた。

このままでは、目線だけで手に穴が開きそうだった。



「えぇーっと……あの……。握手のつもりだった
んだけど。初対面の挨拶のつもりで……」

しどろもどろになりながら、
隠れる場所を探してうろうろする目線をどうにかフェ
イタンに向る


だが

意識のうちに物陰を探してしまうのは、ヒソカと
の暮らしでもう条件反射になっているのだ。



でも、そんな怪しい行動を気にする事もなく、フェイタンは驚いているらしい。




その目はいつもよりわずかだが見開いている。




「……そんな事する住人ここには居ないね」



「えっ……」



「でも、今日はしてやてもいいね……」




そう言うと、フェイタンはに手を差し出した。

顔には出ていないが、なんだか照れくさそうだ。



一瞬固まっただが、
「えっ!あっありがとう」


今度慌てすぎてしまい、心なしか声がひっくり返っている。


まったく何に対してのお礼なのか分からないが、思わず頭を下げて手を差し出した。




その手はギュッと握られる。

ギュッと握り返す。






フェイタンの手は小さくて。まだ子供の手だ。
なんだかソレハ暖かくて緊張を和らげてくれた。








+++


なんだかな……。


目の前にいるフェイタンが、大量殺人をなんとも思わ
なくなるなんて、時って無情なのだなぁ。


はそんな事を考えながら目の前のフェイタン
を見つめた。



「何見てるか?」



もう夜と言う事で夕食をどっかから取って来たフェイ
タンは、近くのテーブルの上に料理をならべ、
もそれを手伝っている。


緊張や驚きで忘れていたが、のお腹はもう
ぺこぺこだ。


「聞いてるのか?何みてるね」


「フェイタンだよ……うはっ!」






はおもわず思っていた事をそのまま口に出し
てまい、慌てて口を押さえた。


が、時すでに遅し。


フェイタンははっきり聞いている。

このたぐいの失敗はヒソカとの生活でも時たまあった
のだが、大抵はヒソカの不気味な笑みにやられ、茂み
に隠れると言う結果に終わる。


酷いときは、修行追加。


フェイタンはどんな反応をするのか……。





大人なら……。



考えたくない。

忘れていたが、腕を痛い目にあわしたりされたのだ。


それも数時間前の出来事。

今のの顔は真っ青に違いない。

「……」


しかし、予想に反してフェイタンは無言。


じーっとを見つめると。



「……バカね」


しみじみと言った感じでつぶやいた。





バカ……。



+++


それから数分。



打ちひしがれるをよそに、用意を終わらした
フェイタンはイスに座って、食べ始める。


「早く座って食べるいいね」



「うっうん」


素直に座って食べ始めた。

何だか、全部フェイタンが用意したのだ。
結局……。
次は役立たねば。は心で決心し、チラッとフ
ェイタンを見る。

と、フェイタンもを見ているようだ。

正直照れる。

「何?フェイタン」


ニヤッ




「別に、バカを拾た思て見てただけね」







ガーーーーーン。


拝啓母上様


遊ばれているのか、本気なのかわかりません。





これが始まりの第一日目。








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