フェイタンは外に出て愕然とした。
その場に居るはずの存在は無く、人通りも疎らな其処には、
其処に居た痕跡すら見当たらなくなっていた。
「……?」
呼ぶ声が、風に撒かれてすっと消えていく。
気弱な彼女27.2
思い出したように、携帯を取り出せば、黒くなった画面。
どうやら電源が落ちていたようだ。
どおりでヒソカへ連絡が行くわけだ。
妙に納得して、素早く電源をいれ再びしまい込む。
落ち着かせるように大きく息を吸い、再び辺りに気配をやる。
その瞬間。
自分を呼び出す着信音に、フェイタンはハッ我に返った。
画面を見れば、立った今まで電話をしていたはずの名前が
点滅して早く出ろと訴えている。
「……何ね」
不機嫌さを隠そうともせず、はき捨てるように出た電話に、
相手はいぶかしむ様に答えを返す。
「首尾はどうだ?」
「……何言てるか、さきまで話してた……」
息を呑んだ。
さっきまで電話していた相手。
確かにクロロだったのか?
の事で気が散っていたのは認めるが、ヒソカから受け取
った電話を、あんなに簡単に信じてよかったのだろうか。
仕事の事を言うのだから、最初の仕事の電話はクロロだった
のだろう。
しかし……。
フェイタンはイライラとする思考を切り上げ、クロロへと
正面を切って尋ねた。
「クロロ、少し前にヒソカに電話したか?」
「……していないが……どうしてだ」
暫し、2人の間に沈黙が広がっていく。
「やられた」
呟く声に、クロロが聞き返す。
「何をだ」
「ヒソカにが攫われた」
微かに震える声が、ソレを真実だと告げている。
クロロはゆっくりと息を吐き出した。
「……直ぐに帰って来い」
「……っ!何言てるか!?」
憤るフェイタンを遮り、クロロははっきりとした口調で言葉
を紡ぐ。
「全員を集める、絶対に取り返すぞ」
『取り返す』
その言葉がフェイタンの耳には嫌に大きくこだました。