窓から見える雲の流れに目をやり、は盛大なため息
を吐き出した。
目的の場所へと到着したらしい、ゆっくりと下りていく
景色と共に、気分も急降下していく。
ここは試験会場のあるザバン市だ。
きっと、ステーキ屋に行って、マッチョメンで溢れかえる
あの中に行かなくてはならない。
今の選択肢には他に候補が無く、それのみがピカピカと
心の中で存在を主張していた。
気弱な彼女28
は先ほどからずっと同じ事を考えていた。
考えても考えても、思考はループするばかりでまったく
纏まってはくれなかった。
”逃げる”そんな選択肢は怖くて選べない。
それにヒソカは師匠だ。
怖くても変態でも師匠は師匠。
まだ主張して帰してもらうならいいけれど、逃げるだなんて
酷い気がしたのだ。
でも……気がかりでならないのは、フェイタンの事。
フェイタンの事を考えるなら、此処を逃げ出してでも
急いで帰るべきで……。
それでも、ヒソカの言葉通りに、ハンタ試験会場について
から連絡するしか……今の自分には出来そうもなかった。
それが苦しく心の中で罪悪感の様な感情を作り出していた。
しかし、逃げ出そうにも、隣で笑っているヒソカの隙なんて
つけそうに無かったけれど。
「、もうすぐ着くけど……抱っこと手を繋ぐ、どっちが
良いかい★」
突然の言葉に、一瞬かたまってしまった。
ヒソカはただただ笑ってを見ている。
「はぁ?」
思わずこぼれ出た疑問の声。
そんな事にも気がまわらないほど驚いていた。
は目を見開き、口を開けて、ヒソカの顔を凝視してしまう。
見上げた顔は、平然と笑っていて、今の言葉がうまく脳内に到達
しそうにない。
気を取り直してもう一度口を開く。
「何で?」
それだけやっと口にし、じっとヒソカの返事を待つ。
どうか……どうか聞き間違いでありますように!
「だから、君の事を会場に連れて行くけど、抱っこされたいか
それとも手を繋ぐかって事だよ◇」
平然とくりかえされる二者択一。
可笑しそうに笑うヒソカを今にも引っ叩きたい気分で、は
拳をプルプル震わせた。
ありえない。
恥ずかしい事この上ないではないか!!
はじめてあった時のあの恥ずかしい思い出を忘れたとは言わせない。
ヒソカを見上げ、はありったけの勇気を搾り出した。
「えっと……どっちも嫌だなぁ〜なんて……」
その場になんとも言えない空気が漂った。
はビクビクとヒソカの返事を待つ。
「却下♪」
無情にも即答される。
でも、此処でひいたら……。
再び勇気をかき集め……。
「おねが「却下★」
言い切る前に遮られ、はガックリとうな垂れると、
座席にへたり込んだ。
「手を繋ぐで勘弁してください」
出た声は微かな小さい声だったが、ヒソカの耳には十分にたどり着いた。
ヒソカが楽しげに笑い声をあげ、は乾いた笑みを浮かべたのだった。