ドキドキと痛む心臓は、今やギリギリと変な音を発てている
気がしてきた。








気弱な彼女24.2












はビュービューと顔に当たる風をフェイタンに隠れてや
り過すと、大きく息を呑んだ。

風の音が耳元をくすぐっていく。


このスピードで行くと、あと数十分もあれば確実にヒソカの
元にたどり着く。


ギリギリギリ



いつの間にか胃まで痛いくなって来た気がする。
はなるべく良い想像をしようと目をつぶって考えた。





仲良く手を繋ぐフェイタンとヒソカ……。





手を繋ぎ自分の周りを回る二人。
そこまで想像した所で、二人は完全に別人とかしてしまった。

……の脳みそには二人が仲良くしてる様子を想像するのは
無理みたいだ。






「エヘヘヘヘヘ」



思わずかわいた笑いをこぼすと、フェイタンが目だけを
に向けてきた。

「どうしたね?」




「なっ何でもないよ!」



「……酔たか?」


「ううん、平気平気!」


実際、全然酔っていない。
最初は不安だったのだが……。
フェイタンは約束通り安全に走っているし、意外と居心地は
抜群だった。


背負っているフェイタンからしたら、如何なのかは分から
ないが……。
実は重いと思っているのでは?
はもしかしたら軽くなるかもしれないと、もぞもぞ動いて
みた。
けれど、むしろ逆効果な気がするが……。
もしだったら、動かれた瞬間に落としてしまうだろう。





……あまり動くと危ないね」



「ごっごめん」


慌ててヒシッとフェイタンの背にくっ付いた。


一人ぐらい軽い物よ、気にしないで乗ってればいいね」



「ありがと……」


バレバレだった自分の行動に、照れつつお礼を言った瞬間だった。








「ぁぁぁああ!」





喉の奥から大声を発していた。
もはや悲鳴に近いものがある。






遠くに見える丘の上、豆粒の様な人影。



遠くからでも分かる存在感。



立ち上るオーラ。





「ひっヒソカ!ヒソカだよフェイタン!!」


危ないと言われたのも吹っ飛んで、はグイグイとフェイタン
の袖を引っ張った。


「わかてるね、そこを目指していたんだから当たり前よ」


呆れ顔で呟かれても、まったく気にならなかった。
驚くに決まってるではないか。
あのヒソカから立ち上るオーラ久々に見た。


此処からでも分かる、絶対とぐろを巻いているに決まってる!




「うわぁ」




フェイタンは、の心など無視してヒソカを目指して進んでいく。
目をしっかりと開き、注意深くヒソカを見つめた。

もうヒソカのあの髪型が肉眼でしっかりと見え、あと少し進めば、
きっとあの顔のペイントも見えて来るはずだ。


風の音に負けないぐらい、心臓が音を発てて主張してくるけれど。
それでもヒソカから視線は外さなかった。


もう顔の表情も読み取れる位置に近づいて、ペイントの形もばっちり見えている。



ヒソカがニヤリとした笑みとともに手を上げ、口を開いた。




「やあ★」





「……ったっただいま」




は擦れる声で呟いた。







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