ああ如何しよう……。
は盛大な溜め息を溢し、チラリと隣のフェイタンを盗み
見た。
気弱な彼女24
「ねぇ……本当に来るの?」
「行くね」
引き止める旅団のみんなと別れ、はフェイタンと2人、
始めに出合ったあの瓦礫の側に立っていた。
いつの間にか暗くなった空には、真ん丸い月がプカプカと
浮かんでいる。
なんだかノスタルジックな気分になり、はブンブンと
頭を左右に振って、気を取り直した。
「でも……絶対喧嘩になる気がする」
「あたりまえね」
「ほらっ!それじゃ駄目なの!今の2人の喧嘩なんて……
絶対危ないよ!」
昔だって十分に危なかっただろうけれど。
「絶対に急に消えたりしないから、ほら……教えてもらった
携帯だって、一時間おきに電話するし……」
此処は諦めて欲しい。
切実に。フェイタンにも……もちろんヒソカにも怪我は
して欲しくないのだ。
何より……喧嘩になってこっちに何か来たら、自分が大怪我
を追うような気がする。
否。
絶対怪我する、怖すぎだ!
「絶対に行くね……何で其処まで嫌がるか」
急にトーンダウンした声音で訪ねられ、は思わず固まった。
ヨワヨワしいその様は、何だか乙女心がくすぐられる。
「フェイタン……」
「……」
潤んだ瞳。
無視なんて出来るはずも無い。
「分かった」
キラリ
一瞬フェイタンの目が光った気がしたが、はそのまま
言葉を続けた。
「一緒に行こう」
「最初から素直に言えばよかたよ」
いまさっきの落ち着いたフェイタンは何処?
は目を見開いた。
風がフェイタンの髪を揺らし、ハタハタと服もはためいて
いる。
「あー……フェイタン?」
「は可愛いね……直ぐ騙されて……危険よ」
「えっ?」
「でも……一回言た言葉は取り消し無しね」
グイっ
手を引っ張られ、は数歩よろめき、慌てて歩き出す。
いまだに追いつかない脳みそが、グルグル回ってよけいに
分からなくしている。
「えっ、え……え!?」
気がついてはっとした。
「いっ今の演技だったの!」
あの可愛らしさは犯罪並みだ。
いったい何処で覚えたというのか。
「いった事は本音ね」
そう言って振り返ると、フェイタンの手はグンとに
近寄り、が気がついた時には視界は変わり、フェイタンの顔
が目の前に。
足は中でブラブラしている。
いまの一瞬でお姫様抱っこされたのだ!
急に加速した歩調に、は慌ててフェイタンにしがみ付く。
「に合わせてたら明方になるよ」
「うっ……」
その通りの言葉に、小さくなるとしっかり手に力を入れる。
「宜しくフェイタン……正し安全に……ね?」
「わかてるね」
1つ頷き、フェイタンは地を蹴り上げた。
返事に安心すると、は笑顔でフェイタンを見つめ、
フェイタンの服に顔を埋めた。