気弱な彼女22











は、フェイタンに手を引かれ廃墟の廊下を進
んでいく。

カツンカツンと2人の足音が、重なるように響いてい
て、偶にが蹴ってしまった小石が軽い音を発
てて転がっていく。


意外と長いこの廊下は、崩れた瓦礫や、ずり落ちそうな
絵が壁に掛かっている。



は、はれぼったく感じる目を擦りながら、辺
りを注意深く伺って進んでいった。


何だか崩れそうで怖いのだ。



「ねぇ、後どれぐらい?」


「もう少しね」


「そっか……」


頷くと、再び黙って着いて行く。
いざもう直ぐたどり着くと思うと、心臓がドキドキして
来た。

何だか動きがぎこちなくなって、こけてしまいそうにな
りながらも着いて行く。

「……そんなに固くならなくても平気ね」




フェイタンが呆れ顔で呟いた。








+++++





大きな扉を目の前に、はゴクリと唾を飲み込
んだ。




……早く行くね……どうせみんな気がつい
てるよ」



「でもさ……うん……」



眉毛を此れでもかと顰め、深呼吸。



「よしっ!行く!!」


決意してからは早い、決意を口にする。


は意を決すると、パシっと頬を叩き、フェイ
タンに目配せした。



1つだけ頷くと、フェイタンはそっと扉に手を掛ける。


「……」




息を呑む。

部屋の視線が全てへと向かっている。









「フェイタン、そいつは誰だ?」








低い、威圧感の有る声に、は身を竦ませた。
ピリピリとした空気があたりを覆っている。


は、久しぶりに何処かに隠れたい衝動に駆ら
れ、慌ててあたりを見渡す。



……しかし、ドアを背に、前には旅団のヒソカ以外の全
員が揃っている。


隠れる場所など見当たらなかった。




「……成る程……思た通りね……」


その脇でフェイタンが物知り顔で呟いた。



「何がその通りなの?」


隠れる場所にフェイタンの背を見つけ、慌てて隠れつつ
尋ねる。



「ワタシの記憶はに触れてから思い出したよ、
きと、触らないと思い出せないね」



「何で?他にもきっかけなんて考えられるよ?」


「体験してみないと分からない事よ……」



しみじみと呟かれては、それ以上言えず、ただ頷くしか
ない。

「でも……どうするの?」


「何言てるか?触ればいいね」


「誰が?」



「みんながをね」



「へぇ……」


何となく頷いてはっとした。


「でも……あんな雰囲気なのに!?」


はっきり言って、あのままこっちに来られたら逃げる自
身が有る。



「確かに……にはキツイかもしれないね」


「うん」



「初期のメンバーだけこちに来るよ」



フェイタンはが頷くのを確認すると、みんな
の方に視線を向けて、顔で来いと合図して見せた。







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