気弱な彼女20










ズキズキと痛む腰に、顔を顰めゆっくりと目を開けた。
光に目が慣れず、目の奥に光が染みてくる。

と……。




「何やてるか!またく、どんくさい奴ね」



良く見知った声に、慌てて顔を上げた。
何だろう、少し大人びたようなその声に首を傾げ、良く
見ようとするが、まだシバシバした目には良く見えてこ
ない。


一気に近づいて来た気配に、その方向へと視線を向けた。




「お前……」


「どうしたの?」


突然止まった声に、声を返す。
自分はあの後どうなったのだろうか?

倒れたのを運ばれたとしても、明らかに此処は屋外っぽい。
ありえない。



「……っ」



息を呑む。


そんな様子に、ますます首を傾げる。



「どうしたの?フェイタン」



……?」


何だろうか、声が震えている。

急に倒れたから心配掛けたのだろうか。


「思い出したね…………そう……だだか」



「フェイタン?」


変だ……。


慣れ始めた目をゴシゴシ擦ると、もう一度開いた。




ボンヤリした視界が徐々にクリアになるにつれ、心臓が
破裂しそうに高鳴るのを感じた。



あぁ……。









此処はあの場所よりも未来。









元の時間軸に帰って来たのだ。








「心配したね……」


フェイタンの表情は、半分も隠れて良く分からないけれ
ど、その声は今にも泣き出しそうに歪んでいた。







「……っフェイタン!!」


訳が分からない。


でも、キュッと胸が締め付けられた。



は泣き笑いな顔を浮かべると、立ちすくんだ
フェイタンに、ぶつかる様に抱きついた。


あぁ大きくなったんだな……。



「おかえり……」



フェイタンの声を耳元に聞きながら、は頷いた。




「だだいま」




すっと素直にその言葉が零れ出ていた。







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