気弱な彼女19.2
後ろの方からそっとクロロの持つ本を覗き込む。
大事そうに持っているも関わらず、クロロはその本を開
く事なく抱えていた。
「ねぇクロロ、その本見せてもらってもいい?」
「ん?ああ良いが、何があるか分からない。気をつけ
ろよ」
本なのに何に注意するのか、は首を傾げたが頷いて
おく。
「うん、わかった」
「ほら」
「ありがとう」
この瞬間、はフェイタンに言われた言葉を思い出し
た。
「あっ……」
しかし、もうクロロから手渡された本は手の中だった。
一瞬戸惑ったが、何もおこらない。
「何だ……」
ほっとして辺りを見渡せば、クロロは興味津々でこっち
を見ているし、他の面々も同じ感じみたいだ。
ただ、マチとパクノダが不安そうに、フェイタンがイラ
イラとした様子でこっちを見つめていた。
「……?」
不思議だ。
しかし、せっかくなのだから、本を見せてもらおう。
そう思って本の表紙へと手を掛けた。
装飾の派手な表紙は簡単に開かれ、周りから息を呑む声
が聞こえてくる。
「えっ?どうしたの」
驚いて顔を上げると、近くのクロロに訪ねてみる。
「あぁ、開けたことに驚いただけだ。ほら、中読んでみ
ないのか?」
促されて、一ページ目に目をやった。
『〜貴方が此れに触った時。
過去の貴方は既に此れを触っている。
時を越えて出合ったのは誰?
忘れているのは何?
再び見える時、触れ合えたなら。
貴方の時は正常に戻るのだろう〜』
口に出して読んでみる。
その瞬間だった。
「……っ」
突然の眩暈が視界を一転させる。
「!!」
誰かが呼んでいる声が聞こえてきた。
答えたいのに、力がうまく入らない。
その内完全に視界が真っ暗になると、体を浮遊感がおそ
って来た。
暫くすると、クルクル回って頭に景色が過ぎ去っていく。
の事を心配して走り回る子供達。
必死になってあの本を開こうとしているクロロとシャル
ナーク。
外に走り出した、ノブナガとフィンクスにウボォー。
家のあちこちを探しているフェイタン。
ソレを手伝うマチにパクノダ、フランクリン。
日々は過ぎて、書物の中で埋もれているクロロ達。
小さなフェイタン達が段々と成長していく姿。
夢でも見ているのだろうか?
は回らない頭で考えた。
あの後倒れて夢を見ている。
そう考えるとピッタシ来る気がした。
その内に、新しい子が増えていたり……。
不思議な夢だなぁ。
なんて暢気な事を考えていた。
と暗闇から一転、眩しい光に目元が刺激されるのを感じ
た。それは暖かくて、段々強くなっていく。
そして……。
軽い衝撃とともには地面に投げ出された。
