気弱な彼女11.








あの後はもう大変だった。








ドキドキを我慢して少しかばったらフィンクスには懐
かれ、フェイタンには嫌な笑みを浮べて叱られ、
はもう訳が分からなかった。

ちょっとした親切心でかばったら大変な事になってし
まったものだ。



悪い事をしていないのに怒られているのだ。





「またく、何でこんな奴庇うか?!」


「お前意外にいい奴だな」


2人の声がステレオで聞こえてくる。


そんな感じで1時間ちかく経った頃、フィンクスが時計
を見て唐突に固まった。


何か在ったのだろうか?


そう思いが顔を覗き込もうとしたその瞬間、
フィンクスはズザッと体の向きを変え、玄関の外へ向かっ
て駆け出してまう。





扉の無い其処を通り抜けると

「悪かったな!それにフェイタンもっ!!」


そう言って物凄いスピードで何処かへ行ってしまった。



フェイタンの不機嫌と壊れたドアだけを残して。


は呆然とその様子を眺めていたけれど、フェ
イタンの自分の名前を呼ぶ声にギリギリと軋む様な
動きで振り返った。



フェイタンは呆れ顔で、追いかける気はまったく無い
ようだ。



「またく・・・・・・・・・・」


呆れたように呟くと、フェイタンは木の破片を拾い始
めた。


「・・・えっと・・・・」

「悪かたね、ワタシ言て無かたせいよ」

そう言うとフェイタンは木屑をその場に置き、
の所まで近づいてそっと頬に手を伸ばした。


「怪我してるね」


「うん・・・・ってイてててて!!!!」




急に怪我とは反対の頬を思いっきり抓くられた!

ジンジンとした痺れが頬全体に広がっていく。
何なんだ一体!はただただ驚くしかない。








「フィンクスムカつくね・・・・」







(ぇぇええええ!?何で?それで何で私の頬っぺた抓
らなくっちゃ駄目なの???)


「何で・・・・何で、フィンクス庇たか?」



「えっ!?だって何だか叱られてる自分見てるみたい
だったから。・・・それにフェイタンが来てくれて嬉
しかったし、許せちゃったって言うか」


「ソレだけか?」







「・・・・?ってイテテテテテテテ!!!」





「バカね」



ふっと見たフェイタンの顔は、心なしか少し赤くなっ
ている様な気がして、何だか頬を抓られたぐらいまぁ
良いか何て思えてしまった。

そんな自分は確かにバカかもしれないなぁ、何て思う。


「確かにバカかも知れないけどさ・・・・」


「もう良いからこの木屑片付けるのが先よ、このまま
じゃ寝るのも無理ね」


まったくその通り、部屋は現実逃避したくなる程の汚
さだ。まるで部屋の中に竜巻が来たみたいになってい
る。


はまず近くの木屑へと手を伸ばした。



ドアが在った入り口から見える外の景色はもう夕闇に
そまり始めている、それを確認するとぐっと焦ってく
ると言うものだ。







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手で拾えるゴミの大部分を部屋の外に押し出すと、
残りの問題はドアの修理だけだ。


フェイタンは、近くのゴミ山からまだ使えそうなドア
っぽい物を物色して運んでくると、取り合えずくっ付
けて、やっと一息着いた。


先に休んでいたが用意したお茶を持っていく
と、一気に飲み干してしまう。

「・・・。今日は此れで大丈夫よ」


「お疲れ様です」


ニッコリと笑いかけるとふいっと目を逸らされてしま
う。

でも今はあんまり気にならない。

今日は色々有った。
けど、フェイタンがどんな意味で言ったとしても自分
は同居人として認められているのがはっきり分かって
嬉しい日でも有った。



だからと言ってこんな大騒ぎ何て二度と御免だと思う
だった・・・。







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