時を渡る訪問者03






村にたどり着く頃には、もうあたりは薄暗くなり始
めていた。





みんなそれぞれ家の事に忙しく働いていて。けれど、
達が通るとみんな振り返ってまで、2人を見
て来た。

ここが鬼の集落なら、よそ者は珍しいのだろう。



「えっと・・・」

名前を呼ぼうとして言葉に詰る。



「あ・・・私は。あなたの名前は?」



自分の自己紹介からしてみる。
これなら不自然じゃない。


「僕?僕はリズヴァーン」

名前を聞いては確信した。


ここは、鬼の集落で・・・遙かなる時空の中での世界
なのだと。
何より顔がそのままなのだ。


「リズって呼んでもいい?」


「いいよ」



の言葉にニッコリと承諾すると、又前を向い
て歩き出す。


この可愛らしい笑顔が、曇る日が確実に来るのであろ
う未来を思うと、は何だか物悲しい気分に
なった。


何とかできないのだろうか、そんな事を考えている内
にリズヴァーンの家へと到着したようで、立ち止まっ
たリスヴァーンに衝突しそうなりる。



「此処が家、入って」


手を引かれるままに中へ入る。
外も純和風の中々趣のある家だったが、中も綺麗な装
飾と、綺麗な造りをしている。


玄関で靴を脱ぎ、


「おじゃまします」


そう言って、は上がった先の部屋へと案内され、
応接間らしいその部屋に一人残された。


「すぐに薬取ってくる」


リズヴァーンがそう言って去った後、部屋の中を見渡
していると1枚の絵に目が行った。
綺麗な絵だ。



「それ、随分前の鬼の一族の人の絵なんだ」


いつの間に戻ってきていたのか、後ろにはリズヴァーン
がたっていた。


「へぇ」

この絵き多分アクラムだ。
アクラム大好きなは一発で分かった。
思わず見つめてしまうに、リズヴァーンは小さく苦笑する。

「絵は逃げないよ、手見せて」


改めて見た手は、結構酷い事になっていたけれど、
の心は結構落ち着いていた。
ここが何処かも分かったし、とりあえずの危険はさっ
て、今は暖かい家の中に居られる。


あっと言うにグルグルにされた手は、もう痛みは無く
、薬のおかげだろう。


「ありがとう、リズ」


「いいんだ。でも、は何処からここに来たのかな?」


まだリズヴァーンの両親は帰ってきていなかった様
で、又後で話をしてみることになった。


でも何処から来たのかは答えられる。
信じてもらえるかが問題だけれど・・・。







「異世界だと思う」
一言呟いた。





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