時を渡る訪問者02







目の前がチカチカして、は顔を顰めた。





「っ・・・・・・・」




ジーンとした痺れる様な痛みが、腕から体全体に広が
っていく。




このままいつまで?まっていられるのか、
ジンジンとする手に力を込めた。




一方下では、突然振ってきた足先と葉っぱに目を丸く
した少年が、呆然とを見上げていた。


もう目は点といった感じで、始めての出来事に、少年
の頭は軽い混乱状態になっている。



でも、この状況のままなら、目の前の人はすぐにでも
落ちてしまうに違いない。



そう気づくと、少年は慌てて走りよっていった。



下からはの足元は丸見えだった。



着物の裾をたくし上げているのだから当たり前だ。



これがこんな状況でなかったらセクハラよ!何て、
は叫んでいたかもしれない。が、はっきり言
ってそんな状況ではないし、下の事はすっかり頭から
抜け落ちていた。




「ううぅぅぅぅ」


何だか涙が。
はもうだめかもなんて、ちょっとたそがれ気
分になってきた。



そんな時。
希望の声が。



「あの・・・。おねいさん?大丈夫ですか?」


ためらいがちに聞こえてきた。


「・・・・・」


何で忘れていたのだろう。

下の状況を思い出して、は今の状況を忘れて
顔を赤くした。



どうしよう。
盗み見がバレたら・・・・。


きっと怒るに違いない。



違うドキドキが、に襲い掛かった。



「えっと、おねえさん?」




心配そうに掛けられた言葉にはっと我に返る。

ここはね今の状況をどうにかする方が大切だ。
よく聞こえるように大声で答えた。





「あっ、あの落ちそうなのっ!助けて!!!!」





少年の声に我に返ったとたん、手の痺れは倍になって
やってきた。
焦ってバタバタすれば、余計に手が痛くなる。




そのむ様子に、少年は急いで木に駆け寄った。



「わかった。まってて」


はっきりとつぶやかれたその声はねまだまだ子供だけ
れど、しっかりとしていて勇気付けられた。



その言葉に、は後少しがんばろう。
自分の手にエールを送った。





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