時を渡る訪問者10.














後ろも振り返らず、無我夢中で足を動かす。
けれど、息は弾み、段々と足がもつれ始める。
心配そうに振り返るリズヴァーンに、大丈夫と答え
ると、なんとか足を前に出す。

落ち武者の怨霊はいつの間にかまけた様で、気配は
リズヴァーンだけになっていた。

と、安心からだろうか、土から盛り上った木の根に躓き、
はその場に倒れこんだ。



!?大丈夫」




「うん……ごめん大丈夫……っ!リズ後ろ!」



恥ずかしさに顔を染めて見上げた先、リズヴァーンの後方
に、落ち武者の怨霊が近づいているのが飛び込んできた。

ガクガクと手が震えだす。

「……っ!」


後ろを振り返ったリズが、こっちとは反対に駆け出そうと
して固まった。

何だろうか、そう考えた一瞬後。

……!」



ガサ



ガサガサガサ




何かが茂みを書き分けてくる音。
その音に、ギギギギッと錆びた様な動きで振り返った。




「……なぁ!」


目を見開いた。


グガァ


落ち武者の怨霊の叫びに、完全に固まった。


ーーー!」



リズヴァーンが叫ぶ。
その声でやっと足が動き出す。


もリズの走り出そうとした方へ、立ち上がり駆け出した。


「早く、こっちだ!」



リズリズリズリズ



は心で必死に叫び、もつれる足を、今までに無い速さで足を動かした。




「……っ」



後もう少しでリズの所までたどり着く、と言う瞬間だった。

!?」



リズヴァーンの驚いた声。


「へっ……なっ何?」



自身を包むように光出した白い光に、目を見開いた。





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