2人の息の音と、木のざわめきが、嫌に耳に響く。
今すぐに何が起こっているのか確かめたい気持ちと、ソレ
を見たく無いと言う気持ちが、胸の中でせめぎ合う。
無言で掛けていく先、森の切れ目で見たものは……。
一番見たくなくて、想像通りの現実だった。
時を渡る訪問者10.2
「なっ……」
隣でリズヴァーンが息を呑むのを感じ、ぎこちない動きで
振り返ると、はリズの手を取った。
「結界の中には一族以外入れないはずじゃ?」
リズヴァーンの声は微かに震えていて、呆然と前を見詰め
ている。
は、リズヴァーンの手を強く握りなおすと、大きく息を
吸い込んだ。
今にも倒れそうな気分で、きっと隣にリズヴァーンが居な
かったら、こんなふうに立ってすら居られなかったに違いない。
「リズ……今は逃げよう」
「!?」
はリズヴァーンを引っ張って駆け出した。
「……」
呟く声と共に、我に返った様子にリズヴァーンに、は
手を握ることで答える。
「、こっちだ」
リズヴァーンは1つ頷くと、逆にの手を引っ張り今来た
森とは逆方向の森の奥に向かって駆け出した。
そのとき。
グガァ
落ち武者の格好をした怨霊が、2人の前に飛び出してきた。
「……っ」
落ち武者の登場に驚く間も無く、ソレは剣を振り上げ、
斬りかかって来た。
「!」
腕を引かれ、よろめいた一瞬後に、今までが居た場所
に振り下ろされる剣。
息を呑み、数歩あとづさる。
「リリリリリリズ!!!」
どもった声が、自分が震えている事を伝えてくる。
「行こう!」
リズヴァーンの声を合図に、再び2人は森へと駆け出した。
