あの夜から数日がたった。
やはり、集落の雰囲気はピリピリとしている。







時を渡る訪問者10














「2人にお願いがあるのだけど」

久しぶりに、和やかな午前。
全員が揃った居間には暖かい雰囲気が流れていた。

ディアナがとリズヴァーンを手招きする。


「どうかしたんですか?」

が見上げて尋ねると、端の方に座っていた
クロノが答えてくれた。

「何時も使っている薬草が切れたんだ」

「だからね、2人に取って来て欲しくて」

「わかりました!」

断る理由も無い、大きく頷き、リズヴァーンを振り返る。

「わかった、2人で行って来るよ」

「あっ」

「……?」

突然何かを思い出したように立ち上がると、クロノは
近くのタンスから何かを取り出した。

「これは今日取る薬草などが載ってる物だ。
よかったら持って行くと良い」

古びた紙を束ねた本の様な物を差し出され、慌てて受け
取ると、はその表紙をジーッと見つめた。
手書きみたいだ。

「ありがとうございます!」

お礼を言ってリズを振り返る。

「頑張って良い薬草取って来よう!」

リズヴァーンが笑って頷いた。


+++++



「それじゃあ行って来ます」


昼食後、出かける準備をして玄関へ向かう。


「2人とも気をつけてね」

「はい!」


靴を履き、振り返って頷いた。

の事はまかせて」

リズヴァーンがを見て、ディアナを見上げる。

「ならリズの事は私に任せて!!」


も同じ様に言うと、笑ってリズヴァーンの手
を取り、ディアナを見上げた。


「ふふふ、なら安心して任せられるわね」

微笑んで手を振るディアナに手を振り返すと、2人は森
に向かって出発した。




+++++





「結構集まったね」

「うん、疲れない?」

「大丈夫」

少し傾いた日差しを見上げながら、伸びをして集まった
薬草を見る。

「そろそろ変えろうか」

「そうだね」

さり気なく荷物を持って歩き出したリズヴァーンを追っ
て歩き出す。

暫く進んでいくと……集落の上のほうに灰色の煙が上が
っているのが見えてきた。


まさか


の脳裏に浮かぶあの映像。



燃える集落。

煤を付けながら逃げているリズヴァーン。

現れた神子。



画面の中に見ていてた風景。


ヒントは凄く少ない。
ゲームで画かれていたのはリズヴァーンが救われるあの
場面だけだから。


だから……


今の現実に起こって欲しく無い、頭を占めている考えな
んて捨てたかった。



「リズ……」

近くにあったリズヴァーンの手を握り締める。
握り返された手を感じながら、集落の方向をじっと見つ
め続けた。





txt_44_back.gif txt_44_top.gif txt_44_next.gif