耳元で響く心臓がうるさい。
走っているけれど、絶対そのせいだけではない筈だ。
今持っている此処の世界の運命を持っている様な物だ。
しかも……そんな現実感の無い規模の大きい事より、此
れのせいであの2人は人生が狂ってしまうような物なの
だから、絶対に誰にも触れさせないようにしなければ。
はただひたすらにホテルへの道を駆けていく。
気まぐれ旅行記09.2
バスから降り、ホテルまでは後数百メートル。
慌ててバスの出口から駆け下りた。
急ぎすぎて、躓き、膝小僧に軽い痺れが走ったが、
は直ぐに立ち上がると再び走りだした。
ホテルのフロントの前を駆け抜け、途中ですれ違った
ホテルマンに不審な顔をされてもただ真っ直ぐ突き進
む。
やっとホテルの部屋にたどり着いた時には、
はもうヘロヘロだった。
「はあっ……はぁはぁ……」
ホテルの部屋の冷たいドアに寄りかかって大きく息を吐
く。
L達は海外へ行く準備やら何やらで今日もまだ帰って来
ていないみたいだ。
少しほっとして目を瞑る。
走りすぎたのか、少し息がし辛くて、暫くそのままゆっ
くり息を繰り返す。
「ふぅ――……」
落ち着いてきた息を整え、ドアからゆっくり離れると、
与えて貰った自分の部屋へと入っていった。
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「さて……」
幾分か冷静になり、心臓の音も半減してきたが『デスノ
ート』を如何するのか、ジーっと見つめていると再び心
臓が音をたて始める。
「燃やすとか?」
有りかもしれない。
は穴が開く程の勢いでデスノートを見つめ続
けた。
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気が付いたら辺りはもう真っ暗になっていた。
目の前が暗くて自分の手も闇色に染まって見える。
「?」
「ひゃうっ!?」
急に後ろから声を掛けられて、慌ててデスノートを投げ
捨てた。
バサっと音を発てて何処かに落ちていくソレを横目に眺
めそうっとLへと目を向けた。
「ん……何ですかそれは?」
「エエエエエエ!!ただのノートに決ってるでしょ、L」
「……そうですか」
明らかに怪しいのにも関わらず、引いてくれたLに感謝
しつつ、ほっと息を吐いた。
「所で、こんな暗い部屋で何をしていたんです?」
「ノート見つめてたりしたりして……」
「……あまり暗い場所で何かを見ると目が悪くなりますよ」
「うぅ、気をつける」
少し項垂れたに、Lが慰めるように声を掛け
た。
「大丈夫です、目が悪くなったら眼鏡作りに行きましょ
うね」
可愛い可愛すぎる。
小首をかしげる気配にもうメロメロだ。
「……へい」
一瞬ノートのこと等忘れて、Lの可愛さに見とれたのは
だけの秘密だ。
