気まぐれ旅行記07.






無事、ライトと合流を果たしたは、その本人
を目の前にしてケーキを頬張っている。


「美味しい?」

「もちろん」


モンブランで有名らしいこの店のケーキは絶品だった。
是非お土産にLに買って帰りたいと考えるぐらいに。


もう一口頬張り、はっとする。


の目的はライトと会うことだったが、お礼の
存在をすっかり忘れていた。

会えた事で舞い上がって、頭から抜け落ちて居た様だ。


「どうしたの?」


挙動不審な勢いで百面相しているに、ライト
が訝しげに首を傾げる。


「そんだ……」


フォークを手から離し、脇に置いてあった袋を取り出す。



「ライト君、此れお礼なんだけど…良かったら使って」




そう言って渡したのは、綺麗な模様の栞と、ブックカバ
ーだ。 ライトなら読書はするだろうし、かさ張らない
物と言うのが決めてで此れにしたのだ。



「ありがとう……何だか悪いな、送っただけなのに」


苦笑しつつも、受け取ってくれた事にホッとして思わず
頬が緩んでしまう。


「送っただけなんて!凄く嬉しかったから」


手を顔の前でブンブン振って力説をする。
それを見たライトはフッと声に出して笑うと、もう一度
お礼を言って包みへと目を落とした。


「開けても?」


「もちろん開けて!」







開かれた袋から中身を取り出すと……。



「綺麗な栞だね……」


「うん、ライトのイメージで決めたんだ」



「何だか照れるな」



そっと栞とブックカバーを袋へと戻すと、バックの中
へと仕舞いこむ。



「大事に使うよ」

「そう言ってもらえると嬉しいよ」


はそう言うと、目の前のケーキをもう一つ口
の中へと頬張り、ニカッと笑顔になる。



「ライト君、また暇な時でもお茶してくれると
嬉しいな、こっちではまだ親し人も居ないし」


「もちろん。でも……」


「でも?」



駄目なのだろうか?は一瞬不安になる。



「名前、君なんて要らないよ」


「へっ……って名前?」

思考が付いて行かず慌てて尋ねる。

「そう、名前」

「ライト……で良いの?」



「うん、その方が良いな。 君付けより親しみやすいし」


クスクスと笑って頷くライトを見て、ホッとした。
会いたくないなんていわれたら結構ショックだったと思
う。


「そっか、そうだね」


考えていた事とは逆の言葉に、調子に乗ってウェイトレ
スを呼び止めると、ケーキの追加注文をしてしまったの
は、ワタリには絶対内緒だ。
お持ち帰りで買ったケーキを食べる予定なのに、ばれた
ら食生活について切々と語られてしまう。

ついこの間Lと一緒にケーキを食事代わりにしたら、も
の凄い勢いで語られてしまった。

Lも偶に叱られているのを目撃する。
Lの場合、あんまり応えてない様だけど。




追加注文したケーキを食べながらそんな事を考え、ライ
トと雑談している内に、辺りは薄暗くなっていた。



「もうそろそろ帰ろうか」



そう言ってライトと別れ、お土産を手に手を振る。


「またね!」



今日は楽しかった。

笑顔を崩さないまま、はホテルへの道を駆け
出した。





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