気まぐれ旅行記05.2
「大丈夫?」
もう一度尋ねられ、慌ててライトの顔を見上げた。
「ありがとう」
そう言って右足に体重が掛かけた瞬間、足首に痛みが
走った。
「・・・っ」
「足を?」
「そうみたい・・・」
は苦笑いを浮かべ、足首に再び力を掛けてみ
た。
「っやっぱり足挫いたみたい・・・ハハ」
「まったく、最近は酷い奴が多いな・・・」
苦々しい顔を浮かべ、自転車が走り去った方へと顔を向
けるライト。
「家まで送って行こう」
疑問系では無く、決定事項のように言うライトの姿に呆
気に取られていると、好青年の代表の様な笑顔を浮かべ、
の荷物を持ち、にっこり笑顔を浮かべた。
「でも迷惑じゃ?だって此処からだとバスを使うし・・・」
「僕はこれから家に帰るだけだから」
何でも無い事のように告げているが、此処からあのホテ
ルの有る近くまでバスで15分歩きも入れれば軽く30分は
掛かってしまう。
しかし!!!
コレはチャンスだ、は内心小躍りしたい心境
と、30分も掛かって送ってもらうのに気を引ける心境と
がぶつかり合っていた。
「・・・じゃあ、近くまでお願いしちゃっても良いかな?」
最終的には小躍りが勝ち、謙虚ながら頷いていた。
今、この場所で生ライトを見ていることに感動し、平静
を装うのも一苦労である。
「気にしないで、さぁその荷物をこっちに」
あっと言う間に荷物を引き受けると、の方へ
手を差し出した。
「じゃあ、行こうか」
+++
バス停まで何とかたどり着き、意外に空いていたバスの
座席に2人並んで座りほっと一息つく。
「ありがとう、このバスに乗ってしまえばあと少しだよ」
乾いた風に鼻を擦りながらライトを見れば、サラリと髪
が揺れていて夕日に照らされキラキラと輝いている。
「どういたしまして、そう言えば自己紹介もしてなかっ
たね」
「そうだっ!確かに自己紹介してなかった」
は既に名前を知っていたため、全然意識して
いなかった。
このまま行けば間違って名前を言っていた可能性もあっ
た自分に呆れてしまう。
「僕は夜神月、君は?」
「私は。」
お互いに名前を名乗ると、この妙な雰囲気に思わず2人
して笑ってしまい、急に緊張が無くなっていくのを感じ
た。
