見てしまった……。
こんな現場、漫画以外で見たこと無い!
三流の悪党みたいなかんな真似……はっきり言って胸糞悪い!
でも……正直あんな大人数の中に飛び込む勇気なんて一ミクロン
有れば奇跡だ。
突撃!バケーション6
「素敵、素敵に『紅茶牛乳』!美味しい楽しい素敵な飲み物!」
「ミルクティーじゃないのねアナタ!」
「君は『紅茶牛乳』〜〜」
コンビニでひっそり置かれていたこの飲み物。
『紅茶牛乳』ちなみに歌は自作だ!
小さめパックの飲みきりサイズ。
何だか気に入って即購入して、飲みながら歩道を闊歩している時だった。
普通なら見過ごしそうな路地の奥。
何故か気になって視線を走らせる。
結果。
今、私の目線の先には、同じ年ぐらいの少女と、それを囲む
青年の群れが存在していた。
年上の男が、年下の、それも少女を大人数で囲むなんて酷過ぎだ。
「……よしっ」
自分以外は気がついていない様だ。
此れは覚悟を決めるべきか?
右手に持った『紅茶牛乳』(結構うまい)のパックもそのままに、
左手を軽く拳を握り、自身を勇気付けると、大きく息を吸い込み駆出した。
「何してるんですか!?」
私の声に、囲まれていた子が最初に振り向く。
その顔は今にも泣きそうに歪んでいる。
「……お前には関係無いだろ?」
リーダーらしき男が振り返る。
その瞬間、ビリリと全身に衝撃が走った。
素敵な御髪に、泣き黒子、そして着ている制服……。
俺様何様跡部様だっ!!
頭の中にこのフレーズがこだました。
「お譲ちゃん、勇敢なのも良いかも知れへん。けど此処は
黙って帰り?」
丸めがね!!
次は衝撃に目がくらむ。
似非めがねの忍足だっ!
此処まできたら、残りも確認せねば。
当初の目的も一瞬吹き飛び、その場の全員に目を走らせた。
一番奥に並んでいるのは、ふわりとした金髪がクルクルした青年
と、独特なパッツンヘアー。
芥川慈郎に向日岳人だ!
一番でかく、戸惑い気味にこちらを見ているのは樺地君!
「チッ……黙って突っ立ってんなら、早く何所か行ってくんねぇ?」
イライラした様に、向日ことがっくんが飛び出してくる。
凄まれても、その前髪の素晴らしさに全然怖くない。
むしろ笑える。
笑いを堪える為、とっさに目線を走らせた先、今度は樺地君と
跡部様が目に入った。
「樺地」
「ウッス」
目と目で語りあう二人……。
ブフゥ!
もう駄目だ、口の中の笑いをこれ以上抑えられません!!
常々思っていたのだ、絶対こみの二人のやり取りを見たら
噴出すと……。
案の定笑える。
なんて素敵なのだ!
何とか笑いを止めようと、右手を握り……。
「あっ」
ビシャ
はっと我に返るが既に遅かったみたいだ。
持ったままだった『紅茶牛乳』のパックは無残にも潰れ、
中身が見事に跡部様のお顔に命中あそばした。
無残にも、したたかに濡れてしまった御髪がハラリと顔に落ち、
ポツリと地面に滴が落ちる。
「樺地」
震える声で樺地を呼び、阿吽の呼吸で樺地のタオルが差し出される。
ふふふ
アハハハハハハハ
「……ヴフゥッ」
取りあえず笑っていいですか?