突撃!バケーション1
今日は日差しも暖かくてかなり散歩日和だ。
私としては昼寝も捨てがたいけど……。
そんな事を考えながら歩いていたのだ。
が……。
ふと気が付くと、いつもとは違う景色。
「迷子?」
ありえない。
いくらぼーっと歩いていたからとは言え、ほんの少しでこん
な変わった場所に出るなんてっ!
もうボケ始めたのだろうか?
そんなアホらしい考えがクルクルと頭を回り始めた。
いくらなんでも、まだピチピチの乙女である。ありえな
いの一言で、この考えは捨て去った。
キョロキョロと辺りを見渡してみるけど、変わらず知らない
道が続いているだけみたいだった。
「うぅぅぅぅ……どうしろっていうのよ」
此処は人に道を尋ねるべきだろうか?
しかし、自分の記憶が確かなら此処は近所なはず。
見覚えは無いけど……。
こんな所で道を聞いたら、この年にもなって迷子のレッテル
を貼られてしまうかもしれない。
しかも!ご近所の噂で!!
「うわぁ〜ん!ランタナさん家のちゃん。この年で迷子
?なんて言われたくなぁ〜い!」
と、叫んだその時だ。
「ちゃん?」
「へっ?」
名前を呼ばれぱっと後ろを振り返る。
「ちゃんでしょ?仁ったら迎えに行かなかったの?」
「えっ?」
明らかに人違いをしていらっしゃる美人さんに、目を瞬かせる。
確かかに私はと言う名前だが、今日は誰とも待ち合わせ
何てした覚えは無かった。
……はずである。
「もう、あの子ったら」
「すっすみません」
「良いの良いのっ!会えなかったのは仁のせいでしょ?」
「だから……」
「ほら、行きましょう!仁には電話しておけば良いから
……ねっ?」
「えっえっえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
何なのでしょうか?
気がつけば手を引かれ、私はその女の人に手をかれて歩
き出していた。
+++++++
「あの……人違いだと……」
その言葉を口にする事が出来たのは、既に家に着いたあ
とだった。
優希さんと言うらしいこの女性、かなりのつわものだ。
自分が此処まで弱腰だったなんて!
驚きである。
「何言ってるのちゃん、そんな分けないわよ?もう
荷物だって家に届いているし……ママから聞いてない
の?」
「へっ?」
「ほら、今日から家で暮らすって話よ?ちゃんのママ
達はお仕事で海外だからって」
ほぅ、それが本当だったら、今日のんびりお茶をすすっ
ていた我が家の母上は、とんだ食わせ物と言う事になる。
だって、そんな素振りひとっつだって無かったのだ。
「おいっ!」
その時だった。
ドカドカと慌しい足音と共に大柄な青年が現れたのは。
「おかえり仁」
「……っ!」
えっと……物凄く見覚えがあるのですが?
この白くってツンツンとした頭。
キツク、睨みつけるようにつり上がった目。
名前は仁。
表札で見た亜久津の文字……。
「迎えに行かしといて、帰って来いって如何言う事だよっ!」
「行き違いになっちゃったみたい」
可愛らしく笑っている優希さん。
目の前の仁君に笑いかけるが、仁君目が物凄い事になって
いる。
正直眉間の皺が気になります。
が!この気がつきかけた思いの方がもっと気になる。
「テヘじゃねーよ!」
気のせいかと思っていたけど……この仁君物凄く見覚え
がある……。
絶対絶対絶対ぜったーーーーーい見覚えがある!!
「テニプリ?」
何が如何なっているのでしょうか?
