時を渡る訪問者01






今日この日にこんな物を身につけていたのはラッキー
だったのか、それともアンラッキーだったのか。







の目の前に広がる緑の海は、さっきまでは存在すら
していなかったはずの物だった。

木々の合間から見えるそらは青いのに、一つとして光
がココに届かない。
そんな状態に、呆然と空を見上げる事しかできない
には、ココがドコかなんて考える余裕さえなかった。






どれぐらいこうして居ただろうか。




やっと落ち着いて、辺りの様子に耳を澄ませると、あ
る気配が近づいて来るのに気がついた。


カサカサ、ガサガサと草の擦れ合うその音は、追わ
れるものと、追うものの音だろうか、段々と大きくな
る音は、どうやらこちらに向かってきているらしい。




ちょっとまった。このまま鉢合わせて大丈夫なのだろ
うか?



否、良くない!

自分の中の用心深い誰かが慌てて首を振っている気が
する。


良い人そうなら出ればいい、悪い人ならそのままスル
ーも出来る。ここは隠れておく方が良いかも知れない。



ちょっとずるい気もするけれど、仮に片方が悪人だっ
たとしたら、上から不意打ち可能な木に隠れるのが
一番だと思う。でも見つかる危険もあるが・・・。






何か良い木は無いだろうか、キョロキョロと探してい
る間にも音は近ずいてくる。


早く、早くと言う焦りが心臓に早鐘を打たせる。



あっ!


あの木は良い。
窪みが木の上部に空き、調度良い位置に木の枝が広が
って、視界を遮っていた。



見つけたら後は根性で上っていくしかない。

ちなみに今のは着物姿だった。


が、

音はもう耳を澄まさなくても聞こえる程になっている。


それに一気に真剣になったは、取っ掛かりを
見つけると火事場の馬鹿力だろうか、着物の裾をたく
し上げ、ガシガシと不恰好ながら、早い速度でその木
上りきった。




上手く隠れられているだろうか、呼吸を正しそっと下
を見下ろせば、50メートル程先の木々が揺れているの
が分かる。






ギリギリセーフだった、数秒もせずにその音の主達が
の居た場所に現れたのは。





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