ジリリリリリリリリリリリ
気まぐれ旅行記10.2
「うっぅぅ〜」
は唸り声を出しながら、ゴロリと布団に丸
くなった。
それでも、音の発信源を止めなければ、煩さが解消され
る訳も無いのだが。
しかし、この暖かい温もりから出たくは無い。
心の葛藤を続けながら、モゾモゾと芋虫みたいに丸まっ
て耳を塞ぐ。
ジリリリリリリリ
しかし、まったく鳴り止まないソレ。
「……ん?」
しかし、ソレはこの部屋に存在したろうか。
否。
こんな盛大な音の鳴る物は無かった。
でも、もう1つの自分の『部屋』には確実に在った。
その存在。
うとうととした頭の中に、1つの疑問が芽を出した。
そうなれば、どんどん疑問が増え始める。
1つ
此処にはこんな音のなるものは無かった。
2つ
こんな音発ててたら、2人が気がつく。
3つ
予測が確かなら、音の正体はセットしなくちゃ鳴らない。
4つ
布団の手触りが違う。
5つ
何だかベットの大きさが小さくなった気がする。
「……」
其処まで考えて、確信に近い思いが芽生えた。
此処は物凄く慣れた場所。
全部知った感覚。
聞き覚えの有る音。
成る程。
は否定したい思いの中で、変えようの無い確
信と戦ってみるも、無残に砕け散る。
「よしっ」
いつまでウジウジしていても仕方が無い。
は深呼吸すると、気合を入れ、バサっと布団
をまくり上げた。
「……はぁ」
口から息が零れ出た。
「帰ってきちゃったか……」
ぽつり……。
嫌に大きく声が響いた。
あれから数日たった。
結局、此処での時間経過は一日。
朝覗いて居なかった事に、家族は学校に行ったと思い放
置。
酷すぎる!
ちなみに、が帰って来たのは朝かと思いきや夕方で、
時差に困る事になったのは余談だ。
は、デスノートの漫画を開き、ボーッっと見
つめた。
再びあちらに行く気は全く無い。
こんな不思議体験黙ってられなくて、知り合いや家族
に言うが……信じるわけも無く。
変人レッテルが重くなっただけだった。
「ふぅ……」
何度目かも分からない溜め息を吐いて、ゴロリとベット
に横になる。
「Lに会いたいな……」
ベットの脇に漫画を置くと、丸まって考える。
あれからどうなったのだろうか。
リュークは?
ライトは?
そして……Lは?
「会いたいよ……」
眠くなって来た目を擦ると、欲望のまま目を瞑った。
「夢でぐらい会いたいな……」
+++++
「ん?」
男は首を傾げた。
目が覚めたら、隣に今ホテルで同居している少女
が眠っていた。
いったい何が如何なって此処に居るのか……。
大きな目がクリクリと興味深げにを見つめて
みる。
「夜這いですか?」
呟いてみた。
が……。
その声に気が突く事無くはスースーと寝息を
発てている。
「うう〜ん」
しかも!
寝返りをうつと、はその男に抱きつき、また
寝息を立て始めた。
「まったく……仕方が無いですね」
男はそう言うと、を抱きしめて隣に丸まった。
ポカポカして段々眠くなってくる。
「良い夢を……」
そう呟くと目を瞑った。
「……L」
声に反応してか、一瞬がモゾリと身動きした
が、やっぱり目は覚めてはいないらしい。
寝ぼけ眼で男に抱きついたまま、も再び眠り
の中に落ちていった。
あとがきもどき